この記事のポイント
  • 日本はXとLINEが圧倒的に強い“特殊な国”。欧米ではInstagram・TikTok・YouTube・LinkedInが中心
  • BtoBならLinkedInは必須。日本ではほとんど使われていないが、欧米では名刺代わり
  • 欧米では匿名より“実名・顔の見える発信”が信頼される
  • インフルエンサー投稿は、英国・米国・EUとも広告表示(#ad)のルールが厳格

日本は、SNSでは“特殊な国”

海外SNSを考えるとき、まず知っておいてほしいのは、日本のSNS環境は世界的に見てかなり独特だということです。LINEが生活インフラになっていて、X(旧Twitter)が国民的なメディアとして使われている国は、ほとんどありません。

SNS日本での位置づけ英国・欧米での位置づけ
LINE国民的なメッセージアプリ。企業の公式アカウントも一般的ほぼ使われていない。代わりにWhatsApp(英国・欧州)、iMessage(米国)
Xリアルタイムの話題、趣味、推し活、キャンペーン。国内有数の利用者数ニュース・政治・業界の議論が中心。ブランド活用は以前より慎重
Instagram“検索エンジン”として店や商品を探すブランドの世界観、リール、ショッピング、クリエイターとの協業の中心
TikTok若年層中心から全世代へ拡大中若年層の情報収集と購買(TikTok Shop)に強い影響
YouTube全世代で視聴全世代。レビュー、ハウツー、長尺の比較動画が購買に直結
LinkedIn利用者は限定的BtoBの必須インフラ。企業ページと担当者個人の発信が名刺代わり
Facebook利用は縮小傾向中高年層、地域コミュニティ、グループ、Marketplaceで今も大きい
Pinterest一部の層で利用インテリア、ファッション、料理、ウェディングの“購入前の計画”に使われる

同じプラットフォームでも、使い方が違う

Instagram:日本は「探す」、欧米は「憧れる・つながる」

日本ではハッシュタグやマップ検索で飲食店や商品を探す使い方が定着しています。欧米でも検索は使われますが、それ以上にブランドの世界観と、クリエイターとの関係性が重視されます。商品の説明写真を並べるより、ライフスタイルの中の一場面として見せるほうが反応されやすい傾向があります。

X:日本は「広がる」、欧米は「議論する」

日本のXでは、フォロー&リポストのキャンペーンや、企業アカウントの“中の人”による親しみやすい発信が効果を上げてきました。欧米では、Xはニュースや業界の議論の場としての色が濃く、同じようなキャンペーンは広がりにくいのが実情です。

LinkedIn:日本企業がいちばん見落としている場所

欧米のBtoBでは、商談相手はまずLinkedInで会社と担当者のプロフィールを確認します。企業ページが空っぽだったり、担当者のプロフィールがなかったりすると、それだけで信頼を損ねます。展示会で会った相手とは、その日のうちにLinkedInでつながるのが欧州の標準的なマナーです。

欧米では「顔の見える発信」が信頼される

日本のSNSでは、匿名のアカウントや、キャラクターを立てた企業アカウントが多く見られます。欧米では、創業者やデザイナー、職人など、実在の人物が顔と名前を出して語ることが、信頼と共感につながりやすい傾向があります。

日本の作り手の、仕事への姿勢や工房の風景は、欧州のフォロワーにとって大きな魅力です。完璧に整った広告写真より、手仕事の途中の一枚のほうが、はるかに強く届くことがあります。

海外インフルエンサーマーケティングの進め方

  1. 目的を決める認知、販売、信頼(専門家の推薦)、コンテンツ素材の獲得。目的によって選ぶべき人が変わります。
  2. フォロワー数より“誰に届くか”で選ぶフォロワーの居住国、年齢層、コメントの質を確認します。欧州では、1万〜10万人規模のマイクロインフルエンサーのほうが費用対効果が高いことも多くあります。
  3. 条件を交渉し、契約で明確にする報酬、投稿本数と形式、投稿前の確認の有無、二次利用の範囲と期間、独占条件。欧米のインフルエンサーやエージェンシーは、条件を明確に書面で交わすことに慣れています。
  4. 広告表示のルールを守る英国ではASA(広告基準協議会)とCMA(競争・市場庁)が、米国ではFTCがガイドラインを定めています。広告であることは、投稿の冒頭で明確に示す必要があります。
  5. 成果を測り、関係を育てる単発で終わらせず、相性の良いインフルエンサーとは継続的な関係を築くと、発信の説得力が増していきます。
日本の「ステマ規制」との比較

日本でも2023年10月から、ステルスマーケティングが景品表示法の規制対象になりました。欧米では以前からルールが厳格で、英国では無償提供(ギフティング)の投稿にも開示が求められます。「日本と同じ感覚でいい」とは考えないほうが安全です。

海外SNSで成果を出すために

ロンドン・ファッションウィークで日本のブランドを支援する際、私はインフルエンサーの選定・交渉・費用の決定を担当してきました。そこで実感しているのは、欧米のインフルエンサーは「ビジネスパートナー」として対等に向き合うと、驚くほど良い仕事をしてくれるということです。

また、グローバルなグルーミングブランドのソーシャル動画には9年間携わり、プラットフォームの移り変わりとともに、同じブランドでも見せ方を変え続けてきました。SNSは、国によってもプラットフォームによっても、そして時代によっても“正解”が変わる世界です。現地の空気を読みながら、運用を一緒に組み立てていきましょう。

よくあるご質問

海外向けのSNSアカウントは、日本のアカウントと分けたほうがいいですか?

多くの場合、分けることをおすすめします。投稿の言語、時間帯、トーン、話題が違うため、ひとつのアカウントで両方に向けると、どちらにも中途半端になりがちです。まずは主な市場の言語で専用アカウントを作り、日本のアカウントから紹介する形がスムーズです。

海外のインフルエンサーには、どうやって依頼すればいいですか?

インフルエンサー本人のプロフィールにある連絡先、所属エージェンシー、またはマッチングプラットフォーム経由が一般的です。フォロワー数よりも、フォロワーの国・年齢層・エンゲージメントの質を確認し、報酬、投稿内容、二次利用の範囲、広告表示のルールを契約で明確にしましょう。

商品を無償提供するだけなら、広告表示はいりませんか?

英国では、無償提供(ギフティング)を受けた投稿にも、その旨の開示が求められます。報酬や投稿内容への関与がある場合は「#ad」などの明確な広告表示が必要です。米国やEU各国にも同様のルールがあります。

Japan Business Insider英国在住30年、英日バイリンガルのプロジェクトマネージャー/デジタルマーケター。ロンドンを拠点に、日本企業の欧州展示会・市場調査・ファッションウィーク運営・デジタルマーケティングを、現地の窓口として支援しています。