- 英語サイトは日本語サイトの翻訳ではなく、海外の読み手のために構成から作り直す
- 欧米のBtoBサイトは「情報を詰め込む」より「絞って、すぐ行動できる」設計が好まれる
- URLは /en/ などのサブディレクトリ+hreflangが、多くの場合もっとも管理しやすい
- 英語での問い合わせ導線、プライバシーポリシー、Cookie同意は公開前に必須
英語サイトで最初に起きている“すれ違い”
日本企業の英語サイトを、欧州の取引先と一緒に見る機会がよくあります。そのとき必ずと言っていいほど聞かれるのが、「で、この会社は何をしてくれるの?」という一言です。
社長メッセージ、沿革、理念、組織図——日本の会社案内で大切にされる情報が、英語サイトの前面に並んでいる。でも海外の読み手が最初の10秒で知りたいのは、何を提供していて、自分にとって何が得で、次に何をすればいいかです。翻訳が正確でも、構成が日本向けのままだと、このすれ違いは解消しません。
日本のサイトと欧米のサイト、何が違うか
| 日本のサイトによくある形 | 欧米で好まれる形 | |
|---|---|---|
| ファーストビュー | 理念やイメージ写真、スライダー | 何をする会社かを一文で。すぐ下に行動ボタン |
| 情報量 | 1ページに多くの情報、バナー、お知らせ | 要点を絞り、余白を多めに。詳細は下層ページへ |
| 信頼の示し方 | 創業年、資本金、取引先ロゴ | 事例(課題→解決→結果)、顧客の声、認証、担当者の顔 |
| 問い合わせ | 電話番号中心、フォームは項目が多い | 短いフォーム、メール、オンライン予約。返信の目安を明記 |
| 文章 | 丁寧で長い、謙遜表現 | 短く具体的。「you」を主語にしたベネフィット |
日本のウェブデザインが「情報密度が高い」ことは、欧米では広く知られています。日本の利用者にとっては合理的な形でも、そのまま英語にすると「読みにくい」「古い」と受け取られるリスクがあります。
英語サイトに必要なページ
- トップページ:一文で伝わる価値提案、主要な製品・サービス、実績、問い合わせへの導線
- 製品・サービスページ:仕様、用途、対応規格・認証、写真、ダウンロード資料(英語のカタログ・スペックシート)
- 海外取引の条件:対応国、最低発注数量(MOQ)、リードタイム、インコタームズ、サンプル対応
- 事例・導入実績:可能な範囲で海外の事例。社名を出せなければ業種と規模で
- 会社情報:所在地、担当者名と役職、対応言語
- 問い合わせ:英語で完結するフォーム、返信までの目安(例:2営業日以内)
- プライバシーポリシー・Cookie同意:欧州向けには必須(GDPRの記事もご覧ください)
多言語サイトの構成とURL設計
多言語サイトのURLの作り方は、大きく3通りあります。
| 方式 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| サブディレクトリ | example.com/en/ | 既存ドメインの評価を活かせる。管理が一元化しやすい。多くの日本企業に向く |
| サブドメイン | en.example.com | 別システムで運用しやすいが、評価は分かれやすい |
| 国別ドメイン | example.co.uk / example.de | その国への“本気度”が伝わる。取得・運用コストが高い |
どの方式でも、言語ごとのページ同士をhreflangというタグで結びつけ、検索エンジンに「これは同じ内容の英語版です」と伝えることが大切です。これがないと、英国の検索結果に日本語ページが表示される、といったことが起こります。
ブラウザの言語やIPアドレスで自動的に別言語へ飛ばす仕組みは、検索エンジンがページを正しく読めなくなったり、海外在住の日本人が日本語版を見られなくなったりする原因になります。言語切り替えボタンを分かりやすく置き、選ぶのは閲覧者に任せるのが基本です。
英語の質は「会社の質」に見える
欧米の取引先は、英語が完璧であることを日本企業に期待しているわけではありません。ただ、サイトの英語は会社が海外取引にどれだけ本気かの指標として見られます。
- 機械翻訳のままの不自然な文、日本語の直訳的な表現
- 英語ページの中に残った日本語(画像内の文字、PDF、フォームのエラーメッセージ)
- リンク切れや、英語版にないページへの誘導
こうした細部が積み重なると、「問い合わせても英語で対応してもらえないのでは」という不安につながります。公開前に、ネイティブの目で全ページを確認する工程を必ず入れてください。
欧州向けなら押さえておきたい技術面
- 表示速度:日本のサーバーだけだと、欧州からの表示が遅くなることがあります。CDNの利用を検討してください。
- アクセシビリティ:EUでは2025年6月から欧州アクセシビリティ法(EAA)がECなどに適用されています。画像の代替テキスト、色のコントラスト、キーボード操作への配慮は、欧州では品質の一部です。
- フォーム:住所欄が日本式(都道府県から)になっていないか、電話番号が国番号に対応しているか。
- 計測:アクセス解析や広告タグは、Cookie同意の後に動くよう設定します。
公開後に育てていく
英語サイトは作って終わりではありません。展示会やメールで接点を持った相手が、サイトを見てどこで離れているのか。どの国から、どの検索語で来ているのか。数か月ごとに見直し、事例やニュースを追加していくことで、海外での“営業担当”として育っていきます。
私は、英語サイトの構成づくりから、英文の作成・チェック、欧州からの見え方の確認、公開後の海外SEOや広告の運用まで、ロンドンからお手伝いしています。
よくあるご質問
自動翻訳プラグインで多言語対応してもいいですか?
社内用や補助的な用途なら便利ですが、海外の取引先や消費者に向けた正式なサイトとしてはおすすめしません。訳文の不自然さがそのまま会社の印象になるほか、検索エンジンにページとして認識されにくい方式もあります。少なくとも主要ページは、人が確認した英語で用意しましょう。
英語サイトは、日本語サイトと同じページ数が必要ですか?
いいえ。海外の読み手が必要とするページに絞ったほうが効果的です。会社概要、製品・サービス、事例、問い合わせ、そして海外取引に必要な情報(対応地域、MOQ、納期、認証など)があれば、まずは十分です。
ドメインは .com や国別ドメインを取り直すべきですか?
特定の国で本格的に展開する場合は国別ドメインも選択肢ですが、多くの日本企業には、既存ドメインの下に /en/ などのディレクトリを作る方法が、管理と検索評価の両面で現実的です。